2009年11月アーカイブ

懐疑論者の事典〈上〉 |ロバート・ T・キャロル

懐疑論者の事典〈上〉懐疑論者の事典〈上〉
ロバート・ T・キャロル
楽工社 刊
発売日 2008-10


事典というには掲載項目に不足あり 2009-11-16 上巻は「あ」行〜「さ」行までの、心霊現象、UFO、超能力、古代文明、陰謀論などの多岐に渡るオカルト関連の用語を懐疑的な観点から皮肉混じりに解説してある本。

とは言え内容的には、「心理学」、「占星術」、「代替医療」、「スピリチュアル」といった方面の用語解説が目立ち、「懐疑論者の事典」と言うには、「なんでこれが無いの?」と言うものが多いように思う。

例えば、この上巻だけでも、「オーパーツ(コソ加工物、アカンバロの恐竜土偶」など)」、「グラハム・ハンコック」、「スフィンクス」、「ストーンヘンジ」、「イースター島」、「アガスティアの葉」、「言霊」、「コナンドイルの妖精写真」、「クルスキーの手形」、「グランドクロス」、「グレイ」、「オリバー・ラーチ事件」などなど、多少この手のオカルトに興味があれば、すぐ思いつく単語や人物名も掲載されていない(「水晶ドクロ」の解説はあるが、オーパーツ関連はそれぐらい)。アトランティスの説明にフォン・デーニケンを出してるのにグラハム・ハンコックの項目は無いのも意味不明(今でも「神々の指紋」を信じてる人が多いのに)。「心霊写真」の解説も簡潔すぎて物足りない。

意図的に掲載を見送ったのかも知れないが、やはり「事典」と謳うには肝心の「情報量」が少な過ぎるのでは。それでいて変にマイナーな単語や人物名を載せていたりと微妙にバランスが悪く、まったくのオカルト初心者が怪しい話から身を守るためのオカルトリテラシーを鍛えるには答えて欲しいであろう項目が無かったりするし、それなりに知識のある人にとっては既知の情報がほとんどで、微妙にどっちつかずな内容。上、中、下巻に分かれても良いから、もっと情報量を増やして欲しかった。
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疑似科学入門 (岩波新書) |池内 了

疑似科学入門 (岩波新書)疑似科学入門 (岩波新書)
池内 了
岩波書店 刊
発売日 2008-04


アメリカの ものよりなんか つまらない 2009-09-16 1.内容
科学者の著者(p203参照)が、「ガードナーやセーガンなどアメリカでは疑似科学を糾弾している本が多く出ているのに日本では本格的に論じたものが少な」(p199)いことに憤慨して(?)、疑似科学を糾弾するために書いた本か。内容は、精神世界にかかわる第一種疑似科学、物質世界にかかわる第二種疑似科学のそれぞれの実際、中仕切りとして疑似科学が生じている背景、後半戦として第三種疑似科学と命名した複雑系の問題、そして最後は処方箋を5つにまとめて提示している。
2.評価
疑似科学についての最初の一冊としては悪くない(一冊にまとまっており、安く、見分け方もそれなりに提示されているし、三種の範疇分けもよい)。ただ、(1)「ガードナーやセーガンなど」の本ほど面白くなかった((『奇妙な論理』(全2冊)、『悪霊にさいなまれる世界』(全2冊。旧名は『なぜ人はエセ科学に騙されるのか』(新潮文庫))、ともにハヤカワ文庫)もご一読を)、(2)ところどころどうかと思うところがある(たとえば、自分がたいしてネットをやらない(推測)だからってネットの悪口を書くのはいかがなものか。また、電磁波についての記述も疑問(ペースメーカーや携帯電話の進歩ってないの?そして、その結果、マナーモードでよくなったということはないの?))ところで星1つ減らして、星4つ。
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人はなぜエセ科学に騙されるのか〈上〉 (新潮文庫) |カール セーガン

人はなぜエセ科学に騙されるのか〈上〉 (新潮文庫)人はなぜエセ科学に騙されるのか〈上〉 (新潮文庫)
カール セーガン
新潮社 刊
発売日 2000-10


もっと早く読めばよかった 2009-01-10 最も影響を受けた本の一つです。
以前は、50%以上の確率で、UFOの存在、血液型による人の性質の違い、星座による人の相性の良し悪しなどを信じていましたが、目が覚めました。
もっと早く読んでいたら、人生が少し変わっていたかもしれません。
未読の方は、是非一読されることをお勧めします。
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怪しい科学の見抜きかた―嘘か本当か気になって仕方ない8つの仮説 |ロバート アーリック

怪しい科学の見抜きかた―嘘か本当か気になって仕方ない8つの仮説怪しい科学の見抜きかた―嘘か本当か気になって仕方ない8つの仮説
ロバート アーリック
草思社 刊
発売日 2007-12-19


怪しい科学に疲れたときにオススメ 2008-10-13  怪しい科学が大流行するたびに「ああ、またか・・・」とがっくりする人も多いだろうが、本書は「あきらめるな、それはあなただけではない。さあ、いっしょに立ち上がろう!」と励ましてくれる。テレビに溢れるペテン師たちのあまりのマヌケ頭に打ちのめされたときに読むとよく効く。

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疑似科学と科学の哲学 |伊勢田 哲治

疑似科学と科学の哲学疑似科学と科学の哲学
伊勢田 哲治
名古屋大学出版会 刊
発売日 2002-12-10


「程度」問題への適切な判定 2009-04-20 お奨めポイントがありすぎて、どこから手をつけて良いものやら困惑中。

創造論(と進化論)、占星術(と天文学)、超心理学、代替医療を取り上げて、いわゆる疑似科学
と正統な科学との“線引き問題”を考察しています。
そうした考察を通じて、概略ながら科学哲学上で論じられてきたいろんな立場を効率よくレビューする
ことができます。科学哲学のわかりやすい入門として好適。同時に、本書の構成上、題材的な扱い
であるはずの「科学という営み」についての格好の入門にもなっています。

特筆すべきは、第4章の後半から第5章にかけて。
厳密な証拠が得られなくとも社会政策上のアクションを起こさなきゃいけない場面は
あって、そんなときの指針はないのかって流れから、統計的検定法へ向かいます。例の
「5%水準で有意」とかいうやつ。あの第一種の誤謬とか無帰仮説とかのやつ。

そもそも、あれが“何をしているのか”、“なんでそんなことしなきゃいけないのか”ってことを、ここまで平
易な文字列に落とし込んだものは空前だったのではないか。
しかも、「有意」な結果が出たからといって、それが当初想定していた相関を検出しているとは限らない
との指摘など、世の多くの統計関連の参考書・一般書を読み進める前に、是非とも本書を読むべき
でしたよ。超納得中。
かつ、ベイズ主義の特徴を数式抜きで解説したモノとしては、小島寛之氏の『確率的発想法』と
ならぶ双璧ではないかと。

そして、明確に白黒つけられなくとも、いろんな基準を動員することによって、そこそこ機能するだけの
判別がつけられることなど、なんだか感嘆しっぱなし。

お奨めポイントがありすぎて、とにかく心からお奨めです。
高校くらいで、総合学習的な科目の教科書に採用されてもOKなんじゃないかしら。

蛇足的ながら、哲学を論理学、認識論、形而上学(存在論)、価値論(倫理学)に別けるのは、
意外と便利であることに何かと気づき中。
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なぜ人はニセ科学を信じるのか〈1〉奇妙な論理が蔓延するとき (ハヤカワ文庫NF) |マイクル シャーマー

なぜ人はニセ科学を信じるのか〈1〉奇妙な論理が蔓延するとき (ハヤカワ文庫NF)なぜ人はニセ科学を信じるのか〈1〉奇妙な論理が蔓延するとき (ハヤカワ文庫NF)
マイクル シャーマー
早川書房 刊
発売日 2003-08


非常にわかりにくく書かれているのが残念。 2009-05-08  筆者が訴えたい内容には大いに賛同するのだが、いくらなんでも
この構成とこの日本語訳では...。

 内容は、後半の第二部は具体的で比較的わかりやすいが、前半の
第一部は、いかがなものだろうか。書かれている内容のほとんどは
おそらく正しいが、科学や懐疑主義を科学哲学的視点から常に考え
ているような人を除き、前半部分は多くの人にとっては極めて難解
かつ退屈であろう。ついてこれる読者がどれだけいるのか...。

 また、日本語訳がとにかくひどいと感じた。本書には、論理が非
常に高度な部分が数多くみられるのだが、訳者がそれを理解してい
ないように思う。前後の論理が通じていない文章がたくさんあるが、
これらは恐らく誤訳なのだろうと思う。

 筆者の想いは、世の中の少なからぬ人がニセの情報を信じてしま
うことに対して、それを正したいということだと思うが、これだけ
退屈に見える前半部(内容は高度で、著者の考えが深い考察に基づ
いていることは、時間をかけて読み、じっくり考えて理解すればわ
かるのだが、記述が抽象的にすぎ、読者に大きな負担を与えている。)
を我慢して読む読者は稀だろう。ましてや、ニセ科学を信じてしま
うような人たちが、そんな忍耐力をもって自分の力で考えながら本
書を読み進めていく可能性は、ほとんどゼロに等しいだろう。健全
な批判的視点を持ち、本書で書かれている方向性に賛同する人です
ら、本書を読むのは苦痛に感じるかもしれない。大学の哲学の授業
で、昔の哲学者の書いた、非常に、かつ不必要に難解に書かれた文
章を読まされているときの感覚だった。

 著者は、極めて冷静に、淡々と文章を書き綴っているが、個人的
には、もっと俗っぽい文章になっても、豊富な具体例をわかりやす
く取り上げ、また筆者の熱い想いが感じられる文章にしたほうがは
るかによかったのでは、と思う。
 慎重に読めば、興味深い内容も多く含まれているだけに、たいへん
残念だった。

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なぜ「科学」はウソをつくのか |竹内 薫

なぜ「科学」はウソをつくのかなぜ「科学」はウソをつくのか
竹内 薫
祥伝社 刊
発売日 2009-10-27


なぜ著者は反科学主義となったのか 2009-12-04 前半部は著者の個人的な経験を中心とした科学社会論(ぽいエッセイ)。著者がなぜどのように科学界のアウトローになったかの経緯がつづられている。後半部は気候変動問題など近年の科学的な問題についてのエッセイ。前半部の個人的な経験については、たくさんの苦労があったんだろうなと同情したり共感する部分もあるのだが、どうも科学者個人の問題と、日本の科学界の構造の問題、科学的方法の問題が明確に区別されていない印象を受ける。科学だって人間の行為なのだから、感情の衝突や泥臭い話もあるだろう。そして本書全体を通してみると、科学者は信用ならないうえ、科学的コンセンサスはいつでも転覆するいい加減なものだと述べているような印象を受ける。

たとえば著者が(学説が抑圧される/コンセンサスが転覆した例として)引用しているエピソードはウェゲナーの大陸移動説だ。著者は大陸移動説が認められたために反対者は赤っ恥をかいたと述べる。しかしウェゲナーの根拠は化石の分布と地層の類似性だけでかなり貧弱だったし、当時は誰もプレートの厚さを知らず、大陸が動くメカニズムも知られていなかった。大陸移動説への反対は狂信や不正に基づいて行われていたのではない。それにその後移動説が受け入れられていったのは、まさに科学的な議論と証拠の蓄積のためだ。コンセンサスが覆されるのは(それが形成されたときには利用できなかった)新たな証拠が十分にそろうからであり、科学の営みの一部だ。

(このレビューのタイトルに反して)著者自身は決して反科学主義者ではない。しかし最近の著作には、どうも一般の人々の中にある漠然とした科学(科学者、科学界)への疑義や反発、誤解に迎合し、積極的に助長しているように思えるものが多いのが残念。
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