2010年1月アーカイブ

環境リスク解析入門 化学物質編 |吉田 喜久雄 /中西 準子

環境リスク解析入門 化学物質編環境リスク解析入門 化学物質編
吉田 喜久雄 /中西 準子
東京図書 刊
発売日 2006-09



この一冊だけで環境リスクが計算できる親切な本 2006-11-16
環境中に存在するダイオキシンや農薬など化学物質によるリスクがどのくらいなのかは、専門家が難しい計算をして出すもので門外漢には縁遠い世界と思われていた。しかし、この本は自分も計算してみようかという気を起こさせる本である。とても懇切丁寧に順を追って説明されており、著者の並々ならぬ配慮や工夫のあとが見える。

大学院で化学物質の環境リスク学を専攻する学生には最適の、かつ必須の教科書と思う。また、データの入手先なども大変具体的に書かれているので、企業、行政で化学物質の安全に携わる専門家はもちろん、これから化学物質のリスクを勉強しょうとする人にも役立つであろう。まさにリスク算出の羅針盤と言ってよい。区切りの節ごとに「まとめ」があるのも嬉しい。




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1,4‐ジオキサン [詳細リスク評価書シリーズ 2] |中西 準子 /牧野 良次 /川崎 一 /岸本 充生 /蒲生 昌志

1,4‐ジオキサン [詳細リスク評価書シリーズ 2]1,4‐ジオキサン [詳細リスク評価書シリーズ 2]
中西 準子 /牧野 良次 /川崎 一 /岸本 充生 /蒲生 昌志
丸善 刊
発売日 2005-02




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サイエンス・サイトーク いのちを守る安全学 (新潮OH!文庫) |日垣 隆 /広井 脩 /畑村 洋太郎 /小西 聖子 /中西 準子

サイエンス・サイトーク いのちを守る安全学 (新潮OH!文庫)サイエンス・サイトーク いのちを守る安全学 (新潮OH!文庫)
日垣 隆 /広井 脩 /畑村 洋太郎 /小西 聖子 /中西 準子
新潮社 刊
発売日 2001-03



現代人が、ある日突然直面せざるを得ない問題。必読! 2009-11-26
ゲストとテーマは、小西聖子「犯罪被害者になった時」、廣井脩「災害報道は何を伝えたか」、中西準子「化学物質との正しいつきあい方」、畑村洋太郎「失敗に学ぶ」。当代一流の論客であるゲストとの「過去に語られざる」ライブトークに、加筆訂正をしたもので、それぞれが大変興味深い、生生しくも濃密な内容だが、やはり「犯罪被害者に・・」と「化学物質・・」が印象に残る。前者のパートで語られる、実弟を殺された、司会の日垣隆の実体験が、あまりに寒々しく、言葉にならない。しかしこの部分は、多くの人に読んでもらいたい。自分や自分の愛する家族が、いつ事件の被害者に、また加害者になるか分からないのだから。そうなった場合の身の処し方について、(私は正直困惑しましたが)やはりあらかじめアタマの中にしっかり留めて置かなくてならない問題です。また後者では、中西環境リスク論のエキスを窺い知ることができる。興味を持たれた方には、同著者の「環境リスク学」(日本評論社2004年)をおすすめします。読んで考えましょう。


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演習環境リスクを計算する |中西 準子 /益永 茂樹 /松田 裕之

演習環境リスクを計算する演習環境リスクを計算する
中西 準子 /益永 茂樹 /松田 裕之
岩波書店 刊
発売日 2003-12



最適の入門書 2005-02-16
 恐らく、日本で初めての環境リスク論の教科書です。
環境リスクの考え方を紹介している本は最近よく見ますが、具体的なリスクの計算原理と算出方法を提示している本は国内外で数冊出版されているだけなので、実際にリスクの算出方法を知りたいという人にお勧めです。
 人体へのリスクから生態系へのリスクまで扱っており、文科系/理科系の大学生の知識で十分に理解出来るように構成されています。実際の計算例と周辺知識が紹介されており、環境学を学ぶ人にとって実に有用かつ必読の入門書です。


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環境リスク論―技術論からみた政策提言 |中西 準子

環境リスク論―技術論からみた政策提言環境リスク論―技術論からみた政策提言
中西 準子
岩波書店 刊
発売日 1995-10



合理的な環境政策を考えるための必読書 2005-05-24
最近出版された「環境リスク学―不安の海の羅針盤」よりも古いですが、データと出典が明示され、実践的な内容に仕上がっています。
環境リスクを全体として削減するために、限られた費用をどうすれば効率的に配分できるのか、具体例を示しながら明快に論じています。
ただし、この論が有効に機能するには条件が必要です。
まず、誰もが納得できる共通の評価基準を決めなければなりません。本書では、人の健康に対して「損失余命」を用いています。
次に、異なるリスク要因について、リスクの大きさの相対関係を崩さないように評価しなければなりません。
最後に、リスク算出の前提条件と算出過程を誰の目にも明らかにして、知見の集積に伴って修正できるようにしなければなりません。
日本は、悲惨な公害を経験し、企業や行政に対する不信感が根強くあります。
その結果、ある危険因子が顕在化すると皆がパニックに陥り、何が何でもゼロにしようとするため、前提も評価基準も対策も動揺します。
その結果、ある対策をとれば安く済み、別の因子に対処する余裕ができるのに、ゼロリスクを目指した高額な対策が続けられてきました。
そして、対策を行う側はパニックを恐れて情報を隠し、国民の側は情報が隠されるので余計パニックに陥るという悪循環が続いています。
最近は、行政が何か情報を公開しても、「肝心な情報は隠されている」などと言って国民の不安を煽る手口まで現れる始末です。
日本で本書の施策を実施するには、その意味で相当な困難を強いられるでしょう。
まずは、行政と企業の側が情報を公開することです。ただ垂れ流すのではなく、国民が自分で対策を考えられるよう、前提条件や評価基準も含めて示すべきでしょう。
その上で、国民も自分達に降りかかる危険因子を減らすために自ら考える責任を持ち、建設的に政策立案に参加することが求められます。
行政、企業、NGOを始め、環境問題に関わる多くの方に指針を示してくれる良書です。是非御一読を。


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選択―リスクとどう付き合うか |中西 準子 /福田 恵温 /唐津 治夢 /武田 穣

選択―リスクとどう付き合うか選択―リスクとどう付き合うか
中西 準子 /福田 恵温 /唐津 治夢 /武田 穣
ケイディーネオブック 刊
発売日 2008-12




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水の環境戦略 (岩波新書) |中西 準子

水の環境戦略 (岩波新書)水の環境戦略 (岩波新書)
中西 準子
岩波書店 刊
発売日 1994-02



やや古いがリスク管理の考え方がよく分かる良書 2009-06-07
本書は上下水道や工場排水処理のあり方をリスク管理の視点から論じている。

本書のほとんどが上水道の水質管理について書かれているが、私が印象に

残ったのは「流域下水道という発想そのものが誤りである」ということだった。

流域下水道とは複数の市町村にまたがるような大規模な下水道のことだが、

これはコストがかかりすぎる上、汚水を地下にもぐらせて下流(多くの場合、

海周辺)の処理場で処理することから途中の河川で再利用できず、また河川

の水量も減ってしまう。即ち貴重な資源である水が循環しないのでダメなのである。

また工場排水は下水道に排出せず工場が自前で処理し河川に放流すべきとのこと。

今まで気づかなかったが良く考えれば当たり前だ。工場排水中の有害物質

が入ってしまえば下水道処理水や汚泥が再利用できない。

筆者は市町村ごとに小規模な下水処理場をつくり、浄化水を河川に戻すことを主張している。

また昔合併浄化槽の個人設置が禁止されていたことは本書で知った。なぜだろう?

現在は逆に単独浄化槽が新規設置禁止となっている。今でも約500万基が使用されているが。

環境リスク学―不安の海の羅針盤 |中西 準子

環境リスク学―不安の海の羅針盤環境リスク学―不安の海の羅針盤
中西 準子
日本評論社 刊
発売日 2004-09



党派性を排した姿勢が多くの人を惹きつけた 2009-01-15
リスク学の評価もさることながら、自伝的部分からにじみ出てくる著者の人間的魅力に感銘を受ける。都市工学科の万年助手から一転この分野の泰斗と目されるに至った経歴には驚かされるが、その辺り、いかに他人に助けられてきたかを穏やかな筆致で綴っている。本人は常にマイノリティであったと語っているが、党派性を徹底的に排したその姿勢(これはBSEを巡るバランスの取れた記述にも現われている)が多くの人を惹きつけたのであろうことは想像に難くない。



環境ホルモン訴訟はこの著の後のことだが、あれだけの人が自然発生的に支援に集まってきたことが、何よりもそれを物語っている。

ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想(DOJIN選書28) |畝山 智香子

ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想(DOJIN選書28)ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想(DOJIN選書28)
畝山 智香子
化学同人 刊
発売日 2009-11-30



「ゼロリスクという幻想」 2010-01-22
ビール 、たまねぎ、 ジャガイモなど身近な食べ物にも毒性はあるという。そういわれればジャガイモの芽は食べるな、とか青い部分は捨てろと教えられていた。でもそれだけで平気で食している。一方でマスコミから流される危ない、危ない、食品や化学物質、賞味期限切れを隠したとかの報道には過敏に反応する。

車は事故による死者の数を考えてみれば危険極まりない代物だが、気にもとめずに使用している。車の持つ利便性があるからだ。

こうなるとリスク評価とかリスク・ベネフィットの考え方を身に付けないと、報道ごとにいちいち右往左往して無駄な損失を余儀なくされる。

情報を発する研究者、告発する市民団体、情報を中継するマスコミなど本書を参考にしてみては。もちろんわれわれ市民も。

もっとも読んでほしいとおもう予防原則を主張をする人たちは、見向きもしないだろうな。 

「ゼロリスクという幻想」の副題が本書の内容をよく表現している。



豊富な数字や情報に基づく内容は、食を巡る問題だけでなく、リスク概念を理解する上で立派な教科書だ。その分少し硬すぎて、遊びの部分とか抽象的記述もほしいところ。中西準子さんの「食のリスク学」や松永和紀さんの--踊る「食の安全」--と併せて読むことによってよりいっそう理解は深まると思う。

理解することー、それはあなたに安心をもたらすでしょうが、だめ、ダメな人には無理なのかな。

食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点 |中西 準子

食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点
中西 準子
日本評論社 刊
発売日 2010-01-09



リスク分析の理解を深めたい 2010-01-24
 環境リスク学の第一人者である中西準子氏の本である。今回は、食の問題に焦点を絞っている。リスク分析の理解を深めるために、多くの食関係者に読んでほしい本である。



 リスク=悪さ加減×起きる確率、である。人は誰でも様々なリスクにお金のかけ方などを配慮して生活している。しかし、妥当性を大きく欠くのが食の問題の数々である。



 例えば、低リスクのBSEに過大に反応したり、影響がありそうなメチル水銀におかしな対応をする。リスクを評価するのが食品安全委員会の役割であるが、評価の一部を中西氏は批判する。また、リスクの評価と管理を分離することは適切でないともいう。考えさせられる指摘である。



 本書は、東大大学院の講演、高橋久仁子氏との対談、松永和紀氏の聞きとり等からなっている。構成は異なるが、中西氏の主張をリスク論から一貫して読める。

 カバーのデザインはキャベツらしい。色使いがスマートさに欠け好感が持てない。内容がよいのに残念である。


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